仕事を辞めたいと相談されたことが多々あります。
私は結構はっきり物を言うタイプなのでそういう相談をされることがよくあるのです。
「仕事がツライから辞めたい」
「人間関係がツライから辞めたい」
そう相談された時に私は決まってこう言うようにしています。
「辞めたかったらさっさと辞めたらいいでしょう」
と。
しかしそう回答するとほとんどの人がこう返します。
「辞めたいけど辞められないのだよ」
と。
言いたいこと分からなくもないです。
分からなくもないんですが、それでも私はいつも思います。
仕事を辞めたいけど辞められないなんていう状況は通常あり得ないんですよね。
会社を辞められない状況なんてありません
いや、厳密に言えば100%ないなんて言えないかもしれません。
ただ、武器社会のアメリカならともかく日本で働いている限りどんな仕事でも辞めたいけど辞められないなんて状況は通常あり得ません。
何故なら日本の法律では出社しない人を強制的に連行して働かすことはできないからです。
以下は長野労働局に寄せられた質問とそれに対する局の回答です。
Q3. このたび家庭の事情で会社を辞めたいと思い退職届を提出しましたが、上司が受け取ってくれません。会社が同意してくれないと私は退職できないのでしょうか?(労働者)
A3.退職は、労働者の一方的な意思表示により効力が発生しますので、特に会社の承認は必要としません。民法では期間の定めのない雇用契約については、解約の申し入れ後、2週間(但し、完全月給制の労働者は、当該賃金計算期間の前半に申し入れた場合は当該期間の末、後半に申し入れた場合は翌期間の末)で終了することとなっており、会社の同意がなければ退職できないというものではありません(民法第627条)。
書いてある通り、従業員の退職は、会社の承認を要しません。
一つだけルールがあるとすれば、原則2週間前に退職を申告すれば自由に辞めることができるのです。
強制的に働かせることは間違いなく法律違反なので、場合によってはこういった労働局などに相談することをおすすめします。
会社から見れば辞めさせたくても辞めさせられない
逆に会社側から見れば、従業員を辞めさせたくなっても強制的に辞めさせることはできません。
従業員の雇用は法律で守られているのです。
Q1. 急に呼ばれて「今日をもって辞めてもらいたい。」と言われました。このような解雇は許されるのですか。(労働者)
A1.解雇は正当な理由がない限りできません。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。30日前に予告をしない使用者は、平均賃金の30日分以上を支払わなければなりません。
ただし、これは解雇が有効であることが前提です。使用者は、労働者に解雇予告手当を支払っても、法定の解雇禁止事項以外に、無期契約労働者の場合については、労働契約法上、①客観的に合理的な理由、②社会通念上相当性がなければ解雇はできません。また、有期契約労働者の場合には、「やむを得ない事由がある場合」でなければ、契約期間中に解雇することはできません。
仕事に行かなければ辞められる
普通どんな会社でも会社に出社してこない人を家に行って強制的に連れてくるようなことはしません。
日本の会社員はよく自分たちを奴隷のようだと例えたりしますが奴隷は逃げたりすると射殺されるか強制連行ですからそれに比べるとずっと自由です。
でも会社員は強制連行どころかいきなり出社拒否してもメールか何かで連絡さえしていれば家に来ることさえごく稀です(さすがに連絡せずに急に出社拒否をすると何かあったかと思われます)。
「仕事辞めます。明日から仕事行きません」
とメールか書置きか何かで伝え、出社拒否をする。
会社側も仕事に来ない人、出社する気のない人をいつまでも雇うわけないので解雇、自主退社なりで必ず辞める方向に進むでしょう。
辞められない理由は何ですか?
その気になったら辞められるということに異論を唱える人は少ないです。
しかしこう話すと、
「私は○○だから辞められない」
という辞められない理由を述べてきます。
そうです。
この辞められない理由があるから仕事を辞めたくても辞められない人がたくさんいるわけです。
その理由は主に下記の3つに分類されます。
1.経済的な理由(生活費がどうこうの問題)
2.社会的な理由(責任の問題や社会的地位の問題)
3.将来的な理由(将来再就職できるかという問題)
これらの辞められない理由があるから辞めたくても辞められないわけです。
経済的な理由で辞められない人へ
仕事を辞めると収入が途絶えるのでそれが心配で辞められない人は多いと思います。
特に貯金が全くない状態で一人暮らしとかしていると収入が途絶えるとかなりキツイですよね。
じゃあ貯金すればいいじゃないですか。
少なくとも1年、最悪半年分の生活費くらいの貯金があれば仕事を急に辞めてもその間に新しい仕事をゆっくり探せます。
仕事を辞めると自主退社でもちゃんと失業保険は降りますし社会保険の支払いも延長することが可能です。
まずは最低限の生活費を貯めましょう。
それすらの余裕がない人は実家に帰るなり副業でバイトするなりなんなりして貯金しましょう。
仕事は自主退社以外でもなくなる可能性があるわけですから仕事がなくなってたちまち困る状況は結構危険です。
社会的な理由で辞められない人へ
日本人は仕事熱心な人が多く「自分がいないと会社が困る」と思って辞められない人が結構います。
特に中小企業だと従業員が少ないため若手でも自分一人いないだけで社内に大きく迷惑が掛かる恐れもあります。
だけど別にそんなの考える必要ないでしょう。
だって辞めたいと思っている会社なんですよ?
辞めたいと思っている自分の生活にとって不要な存在と自分とどっちが大事でしょうか。
当然自分ですよね。
それによく「自分がいないと会社が回らなくなる」と思っている人がいたりしますがそんなに重要な人材ならその分給料を支払うのが道理でしょう。
社内のキーマンなら少なくとも社内で最も高い報酬をもらう権利があるわけです。なのにもらえないから辞めたいと思うわけですよね。
貰えないということはキーマンでもなんでもありません。
本当に重要な人材なら「辞める」と告げた途端に出せるだけの給料を払うからと説得してくれるはずです。会社側からすれば辞められると会社が回らなくなって倒産してしまうわけですから何が何でも引き止めたいはずでしょう。
将来的な理由で辞められない人へ
日本は定年制、終身雇用が根強く残っているため入社した会社でずっと働くという教育子どもの頃から植えつけられます。
しかしもうすでに終身雇用なんて「あってないような制度」で新卒で入社した会社で定年までずっと働く人はほんのわずかに限られます。
あなたの会社には新卒から働き続ける50代、60代の人がどれだけいるでしょうか。
大半はそもそも創業から40年経っておらず誰一人そのような人はいないでしょう。
創業から40年以上の会社でも新卒からずっとその会社に30年以上勤めているという人はおそらく1割、2割程度ではないでしょうか。
では残りの人達は?
離職率が極めて低い優良企業ならともかく、だいたいの中小企業の従業員は中途採用で入社した人が多いはずです。
これが何を意味するかというと一度会社を辞めたけど再就職できた人はたくさんいるということです。
もちろん今の仕事を辞めてすぐに新しい仕事が見つかるかどうかなんてわかりません。
統計では転職回数が多いと生涯年収が下がるというデータもあります。
安定、安泰を考えるなら「辞めないことがベストである」ということは否定できないのかもしれません。
しかし辞めたからと言って必ず将来困るというわけでもありませんし、むしろ「辞めたい」と思うような劣悪な職場から離れた方が良い方向に向かうことが多いでしょう。
特に就労人口がどんどん減少している現代では慢性的な人手不足の時代に突入しつつあります。
10年前と違って今は「再就職できないかも」と心配する必要はほとんどありません。
精神的に病む前に辞めよう
日本では仕事による精神的な負担が強く、うつ病等の精神的な病気になってしまう人が少なくありません。
実際私の知人にもうつ病によって休職した人が数人いますし実際うつ病による労災が認められるケースも年間数百件に上ります。
一度精神的な病気になると中々復帰出来ません。
骨折や腰痛で休職しても数か月でほぼ完治しますがうつ病は治りにくく、治っても再発しやすく完治しずらいと言われています。
仕事がなくて生活できず死ぬ人はほとんどいない
日本では仕事のストレスで精神的な病気を発症し、自殺をしてしまう人も少なくありません。
厚労省の統計では病気で死ぬ割合が少ない20代~30代の死因の1位は「自殺」となっています。
第8表 死因順位1)(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合2)
一方で仕事がなくて生活が出来なくなり餓死する人は日本ではほとんどいません。それでも年間数十人いるようですが…
仕事が辛くて精神的な病気になってしまうのと、極めて低いが仕事を辞めて将来生活に困る可能性があるのとではどちらが良いでしょうか。
私は断然後者の方が良いと思っています。
もちろん向こう見ずに突然退職するのは自分の首を絞めるだけですが、退職してもたちまち困らない状況にあるなら辞めちゃえばいでしょう。
別にフリーターになっても死ぬことはありません。でもうつ病になったらバイトさえできなくなるかもしれませんよ。
無理して続ける方が将来的に困ることになる可能性が高いんです。
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